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海外ではAIをデザインにどう使っている? 世界の企業に見る生成AI活用事例

海外ではAIをデザインにどう使っている? 世界の企業に見る生成AI活用事例

生成AIはデザインの世界をどう変えているのか

「生成AIでデザインする」と聞くと、文章を入力して画像を作る場面を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし海外の事例を見ると、AIは企画のアイデア出しや撮影前の準備、ブランドのルールを守るための管理といった工程にも使われ始めています。

この記事では、AIの使いどころが異なる3つの事例を紹介します。
いずれもAdobeの生成AI「Adobe Firefly」に関わる事例で、内容は主に各社の公式発表にもとづいています。

Adobe|生成AIで広告のビジュアルを制作

2026年春、Adobeはニューヨークのタイムズスクエアで、Fireflyの広告キャンペーン「Just Imagine」の一環として大規模な屋外展示を行いました。
ウェビー賞を前に開かれたクリエイター向けイベント「Creator Weekend」を締めくくる企画です。

Adobeの公式ブログによると、使われたのは6ブロックにわたる38面のスクリーンです。
縦横比は30種類、大きさは12フィート(約3.7m)から200フィート(約61m)までさまざまで、夜8時30分から1時間、すべての画面を同期させて上映しました。
映し出したのはFireflyで作った392点の画像と映像で、合計3.8時間分にのぼります。
作り手はAdobeの社員や一般のクリエイター、招待された23人のインフルエンサーなどです。

制作では、まず「Firefly Boards」で幅広い方向性を比べてアイデアを固め、文章から画像を作る機能で数百点の素材を、画像から映像を作る機能で動きのある素材を作りました。
スクリーンごとの制作が始まったのはイベントの数週間前で、素材の確認や承認には動画レビューツール「Frame.io」を使いました。

AIが完成ビジュアルそのものを大量に作った事例ですが、比率の異なる数十面の画面に一つの流れを割り振り、短期間で確認を回す段取りも欠かせなかったことが読み取れます。
自社製品の見本として行われた展示である点には注意が必要です。

Lipton|撮影前のアイデアづくりにAIを活用

二つ目は、Liptonのアイスティーの広告です。
Omnicomグループの制作会社Critical Massが、ブラジルやメキシコなど中南米の市場に向けたキャンペーンを担当しました。
Adobeの事例紹介によると、25本のストーリーと7種類のボトルデザインを展開する規模でした。
キャンペーンの実施時期は、事例紹介には書かれていません。

この事例でAIが使われたのは、主に撮影より前の工程です。
制作チームは、参考画像の構図や画風を引き継いで画像を作るFireflyの機能で、ブランドらしい色や光のイメージをすばやく作り、企画の方向性をクライアントと共有して承認を得る材料にしました。
作られたのは100本以上の絵コンテと2,000点を超える画像です。
Liptonの黄色に鮮やかな青を合わせる色づかいも、この過程で固まりました。

出演者選びにもAIが使われました。
多様な人物像のイメージをAIで作って出演者や小道具を選ぶ手がかりにし、出演者は1週間で決まったと紹介されています。

大切なのは、完成した広告に登場するのは実在のモデルだけだという点です。
AIの画像は、撮影前に関係者のイメージをそろえるための下絵として使われました。
事例紹介では、目標の142%のリーチを達成したといった成果も挙げられていますが、いずれもAdobeが公開した数字です。

Coca-Cola|ブランドの世界観をAIで統一する

三つ目は、Coca-ColaとAdobeが共同開発した「Project Fizzion」です。
Coca-Colaが2025年5月に発表した仕組みで、発表時点では試験運用の段階とされていました。

200以上のブランドを200を超える国で展開する同社にとって、各地で作られるデザインをブランドのルールに沿ってそろえることは長年の課題でした。
Fizzionは、デザイナーがIllustratorやPhotoshop、InDesignで作業する様子からAIが学び、レイアウトや文字組みの判断を「StyleID」という機械が読める形で記録します。
各国のチームや広告会社は、このStyleIDを手引きに、ルールに沿ったデザインのバリエーションを数多く作れるようになります。
同社は、コンテンツを最大10倍速く作れるとしています。

ここでのAIの役割は、新しい絵を描くことではありません。
ロゴや書体、画像の使い方といったブランドガイドラインを、読んで守る資料から、素材に組み込まれたルールへと変えることにあります。
同社のドミニク・ハインリッヒ氏は、ガイドラインの誤った解釈を防ぐことが、AIでコンテンツを作るうえでの大きな課題だったと述べています。

Coca-Colaはその後、2026年7月20日に新しいグローバルな視覚表現の体系を発表し、展開を支える「デザイン・インテリジェンス」のツールを導入したと説明しています。
ただし、この発表にFizzionの名前は出てこず、両者の関係は公式発表からは確認できませんでした。

AIはデザイナーの仕事をどう変えるのか

3つの事例を並べると、AIの役割は次のように分けられます。

役割事例AIが担ったこと
完成ビジュアルを制作するAIAdobe「Just Imagine」広告画面に映す画像・映像を生成
企画・制作準備を支援するAILipton × Critical Mass絵コンテや人物像の参考画像を作り、撮影前に方向性をそろえる
ブランドの一貫性を支えるAICoca-Cola「Project Fizzion」デザイナーの判断をルールとして記録し、展開時に適用する

使いどころは違っても、何を作るかを決め、最終的に何を採用するかを判断しているのは、どの事例でも人です。
Liptonの広告は実在のモデルで撮影し、Coca-ColaはAIが学ぶ手本をデザイナー自身の作業に置いています。

編集部が注目したいのは、AIが完成画像を作る場面だけでなく、案を比べる、関係者のイメージをそろえる、ルールを守るといった工程に入り込んでいる点です。
短時間で多くの案を出せるようになるほど、どれを選び、ブランドとして何を守るかを決める人の役割は、かえって重くなると考えられます。
一方で、今回紹介した数字の多くはAIツールを提供する企業や利用企業が自ら発表したものです。
生成AIがデザインの現場をどこまで変えるのかは、こうした事例がさらに積み重なってから見えてくるはずです。

参考・情報源

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